【M27】『黄道光(こうどうこう)と天の川のクロス』を撮影する
1.ミッションレベルC+
○天の川よりも淡い光の帯
日が暮れた直後の西の地平線、もしくは明け方の東の地平線から、天頂に向かって伸びる淡い光の帯が見えることがある。これを黄道光といい、黄道面に広がった塵(ちり)が、太陽の光を反射して見える現象だ。今回は、秋の夜明け前、東の空に見える黄道光を撮影するミッションだ。
○撮影時期
日本ではおもに1月~3月(夕方の黄道光)、もしくは9月~11月(明け方)に見やすが、天の川よりも淡いため、秋の澄み切った夜空との相性は抜群だ。
宇宙情報センター / SPACE INFORMATION CENTER :黄道光引用
○宮沢賢治も見た黄道光
銀河鉄道の夜で有名な、宮沢賢治の戯曲の中にこんなフレーズがある。
「天の川はおれはよくは知らないが、何でもXといふ字の形になってしらじらとそらにかかっている。」(ポランの広場/宮沢賢治)
この節にある「Xという字の形」というのが、黄道光と天の川がクロスした様子だと言われているそうだ。
雲海により下界からの光害が弱り、常念岳上空に黄道光が姿を現した。
星景写真撮影の「絞り」「シャッタースピード」「ISO感度」の3つの基本設定。星空撮影。
目次
1.設定の話
星景写真撮影での、正しいカメラ内設定は?と質問されたら、
「条件(明るさ)によって、絞りとシャッタースピード、ISO感度を調節した設定」であると答える。
スナップ写真を撮るときに、マニュアル設定で撮る人はほとんどいないだろう。その時の明るさに合わせて、カメラが自動で最適な設定をしてくれるオートモードでの撮影をしている人が多いのではないか。当たり前になっているが、カメラの細かい設定を覚えなくても、目で見ている景色をそのまま写すことができる優れた機能だ。
しかし、星空の撮影をするならば、「絞り」「シャッタースピード」「ISO感度」の3つの設定を覚えることを勧める。シャッターを切ってみるとわかるが、オートモードで、星空にカメラを向けても、正しい設定を選択することができないのだ。
2.3つの設定を理解して、適正露出を自分でコントロールする
「絞り」とは
明かりを取り入れるための、「穴のようなもの」である。穴を小さくすれば光はあまり入らないし、穴を広げれば光がたくさん入ってくる。絞りは、F値ともいわれる。カメラ内の表示では、「F2.8」などと表示される。数字が小さければ穴は大きく広がり、明かりをより取り込める。
つまり、F5.6よりF2.8の設定の方が、多くの明かりを集めることができる。明るいレンズとは、F値の小さいレンズのことである。
○F値は小さければ小さいほどよいの?
レンズには、それぞれ設定できるF値が決まっている。F値が1.4などと明るいレンズがあるが、一段、二段絞るとよいことがある。理由はサジタルコマフレアを防ぐためである。
※サジタルコマフレアとは、星が鳥の形のよう になってしまう現象である。
「シャッタースピード」とは
シャッターを開けておく時間である。長い時間シャッターを開けておけば、たくさんの明かりが入るし、短い時間ならば少しの明かりが入る。つまり、夜間の撮影では、長い時間あけておく必要がある。
長い時間シャッターを開けておけば、明るいレンズも高感度に強いカメラもいらないのでは?と思う方がいるだろう。確かにシャッターを長く開けておけば、明かりを集めることができるが、日周運動により星は線状に写ってしまう。星を点で写す為には、画角に合わせたシャッタースピードを設定する必要がある。
○画角に合わせたシャッタースピード
下記の計算式で上限露出時間を求めることができる。
500 ÷ レンズの焦点距離(フルサイズ換算)= 上限露出時間(秒)
15mm→33秒
18mm→28秒
20mm→24秒
24mm→20秒
28mm→17秒
見ている方角や位置、写真を引き延ばしたサイズにも関係するため、画角に入る全ての星に適用できるわけでないが目安にして撮影すると便利だ。
「ISO感度」とは
ISO感度は、光を受け取る能力だ。数値が高ければ、弱い光でも強く受け取ることができる。高感度とは、ISO感度が高いことである。暗い場所での撮影で高感度にすれば、シャッタースピードを早くすることができる。よく「高感度に強いカメラ」と聞くと思うが、ISO感度を上げてもノイズが少ない写真が撮れるカメラのことである。
※高ISO感度撮影時に暗部に赤や青、緑のピクセルが見える場合がある。これらを抑制する際、ザラザラ感や粒状感が残る場合がある。これが「輝度ノイズ」と呼ばれている。
優れたカメラでも、感度をあげればノイズが増える。だから、撮影者の気持ちとしては、ISO感度をできるだけ押さえて撮影したいのである。
カメラの仕様によるが、目安は、
ISO感度1000〜3200くらいではないだろうか。
CanonEOS 6dの液晶画面である。左の赤丸からシャッタースピード、青丸の絞り、黄丸のISO感度。
3.まとめ
1.適正露出をコントロールするためには、絞りの数値を小さくして、星の流れないシャッタースピードを選択し、ISO感度を上げて明るさを調整する。
2.ノイズの許容範囲でISO感度を最大にして、 絞りとシャッタースピードを設定するのことも撮影の選択肢の1つであるだろう。
4.作例より
新月の日、標高約2000mからの撮影。光害の少ない空の暗い場所では、このような設定での撮影が必要となる。空が明るくなりすぎず、星の明かりが一番美しく見えるカメラの適正露出を見つける。
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【M26】御岳山の紅葉と星空を撮る。〈登山〉
目次
1.御嶽山黒沢登山道一部規制緩和
御嶽山には二度登山させていただいている。
1回目は、2014年9月27日の噴火一週間前に王滝口から。それ故に、噴火のニュースは他人事とは思えなかった。あの日から御嶽山には一層関心をもっていた。あれから四年。黒沢登山道一部規制緩和が、平成30年9月21日発表された。
規制緩和は、 平成30年9月26日(水)午前10時30分より、ご遺族及び関係者 。 一般登山者は、正午12時00分からである。
一般登山者の規制緩和は、翌日からにすればいいのにと個人的には思うが、時刻をずらした配慮がされていた。ご遺族及び関係者の気持ちは計り知れない。犠牲者の方々のご冥福をお祈りします。
2.御嶽山の紅葉は素晴らしい
やはり、山は美しい。再び御嶽山を訪れたとき思った。もっとたくさんの人が来たらいいのにと。
紅葉の撮影をするならば、黒沢口からの登山をオススメする。
今回の登山では、
6合目駐車場→女人堂→石室小屋→二.五池→摩利支点→五の池小屋→三の池→女人堂→6合目駐車場
のルートで登山したが、三の池→女人堂の紅葉樹の数と色に圧倒された。
女人堂から三の池小屋へ
3.ミッションレベルB
私は、ナイトハイクで御嶽山を登った。黒沢口には6合目に駐車場がある。この登山口からロープウェイ到着地点までは、歩いて50分。ロープウェイを利用すれば50分の登山を短縮できる。
8合目の女人堂までは、所用時間は約2時間である。ここからは、植物の高さも低くなり、視界も開けを景色を楽しみながら登山ができる。
4.星景ランクA
何度も通いたいと思える素晴らしい景色だ。御嶽山は、台形のような形をしている。標高の高い場所が広いため撮影ポイントが豊富だ。
池も多くある。噴火後に新しくできた、二.五池も美しかった。
「三の池」
「二.五池」
5.星空ランクB +
6.ベストショット
女人堂までの登山中、小休憩をしながら撮影した一枚に流星が入った。
今回は構想通りの写真を撮影できなかった。足しげく通い、最盛期の紅葉と星空を撮りたいと思う。
【M25】今までで見た1番美しい星空を見つける
1.1番美しい星空とは
自分で問いかけたが、「今までに見た1番美しい星空」というテーマは、とても難しい。
標高が高く空が近い場所。空が暗い。空気が澄み切っているなど、星が美しく見える条件はいくつかある。そういう条件の中で一番を見つけるのも面白いが、自分の記憶を頼りに見つけてみたいと思う。
今までで見た一番美しいと思う感覚は、味覚に似ていると思う。ボクシングの減量後に食べたおにぎりの味や、子供の頃に連れて行ってもらった海で、父親が獲ってくれたウニの味などは忘れられないものだ。味覚には思い出が加算されているように思う。
星空も同じように、いつ、誰と、どんな気持ちで、どんな出会い方で見たかが影響するのではないだろうか。今見る星空と、初めて天の川を見た感動では違うように。
2.1番美しい星空
友人が突然倒れ救急車での付き添いをした。容態が安定し、私だけバンガローに戻り、ふと見上げた星空は心に残っている。
初めて友人と飛行機に乗り、波照間島で見た天の川、初任者研修で山小屋に泊まり、ヘトヘトの中見上げた星空なども思い出深い。
ここ数年で考えると、日本最後の秘境と言われる雲の平で見た星空が心に残っている。
片道およそ15kmの道のりを10時間かけて歩き、たどり着いた場所からの星空は格別だった。
きっと、星空を彩るのは、それを見るまでの背景なのだろう。
『雲の平の天の川』
星景写真撮影に役立つオススメ3大サイト+2
以前投稿した「星景写真撮影に役立つおススメ3大サイト」も参考にしていただければ。
撮影地を打ち込めば、標高が分かる優れたサイト。美しい星空を見る条件の一つである、標高を簡単に知ることができる。
旅行に行く際、撮影スポットを探すのに活用してる。
5.光害マップLight pollution map
あなたの住んでいる場所から、もっとも近い「星降る夜空」の見える場所を探す地図! - ICHIROYAのブログ
空の暗さを判断するのに光害マップは大変便利なサイトである。
地震により大停電のあった北海道では、札幌市内であっても天の川が肉眼でみえたという。空の暗さが満天の星空の条件である以上、撮影地を探すうえで光害情報は切ってもきれないものである。
【M24】夜の雲海と星空の写真を3枚撮る。
1.ミッションレベルBー
「真っ白な雲の絨毯」「まるでラピュタの世界」などと、雲海のある景色の美しさが例えられる。
単調な景色が、雲海の発生で特別なものとなるのだ。
夜の雲海を見たことがある人は、それほど多くはないだろう。普段の撮影では邪魔者扱いされる下界からの光は、雲に色を与え幻想的な景色を演出する。何色にも色を変え、雄大に形を変える雲の様子は、大変神秘的である。自然と文明が織りなす景色に心を奪われる。
雲海には、下界からの光を遮断し、空を暗くする効果がある。天の川はより濃く見え、星は一層輝きを増す。白い雲は、暗闇にあっても存在感を失わない。
「美しい景色をカメラで作り出したい」気持ちも分かるが、私は、感動した景色にシャッターを切りたい。美しいと思ったものを撮りたいのだ。この当たり前の撮影意欲を、私は大事にしている。
雲海と星空の景色を見るたびに、この大事な撮影感覚を思い出させてもらうのだ。
雲海は、条件が重なることで発生する。いつでもみれる景色ではなく、特別な気象現象だ。雲海の発生条件を頭に入れておけば、出会える確率があがるだろう。
【雲海の発生原理4つのステップ】
1.放射冷却などで地面が冷える
2.地面付近の水蒸気を含む空気が冷える
3.無風で冷えた空気が溜まる
4.空気中の水分が飽和状態を通り越して霧ができる
【雲海の発生条件5つ】
1.季節:主に春や秋
2.時間帯:夜明け前~早朝
3.気象:湿度が高い・放射冷却がある・無風状態・快晴
4.気温:前夜の気温と次の日の早朝の気温に差がある
5.場所:山間部や盆地
雲海が発生しやすい場所が存在する。情報を集め撮影に行くことをオススメする。
月ごとの撮影計画 10月
10月
9月下旬から10月初旬は、例年、標高2500~3000mの北アルプスや南アルプスの紅葉の時期である。北海道や東北も同じ位の時期に紅葉するのだろうか。9月27日現在、乗鞍岳の位ヶ原あたりが見頃だと言う情報を得た。今週末は、台風の影響で撮影が難しそうだ。
私は、例年涸沢の紅葉撮影に出かけているが、裏剱岳や鏡平や槍沢などの紅葉の撮影もタイミングがあえば訪れたい場所である。
中旬には、上高地や刈込池、乗鞍高原の紅葉がよい時期となる。桜と同じで見ごろは一週間程度と短いため、十分な撮影計画が必要である。
秋は、雲海と星空の撮影に適した季節である。夏にも雲海が発生するが、秋はそれ以上に空気が澄んでいて星空の撮影が楽しい。
10月21日は、オリオン座流星群の極大日である。流星と星空もいいだろう。