星景写真撮影の「絞り」「シャッタースピード」「ISO感度」の3つの基本設定。星空撮影。
目次
1.設定の話
星景写真撮影での、正しいカメラ内設定は?と質問されたら、
「条件(明るさ)によって、絞りとシャッタースピード、ISO感度を調節した設定」であると答える。
スナップ写真を撮るときに、マニュアル設定で撮る人はほとんどいないだろう。その時の明るさに合わせて、カメラが自動で最適な設定をしてくれるオートモードでの撮影をしている人が多いのではないか。当たり前になっているが、カメラの細かい設定を覚えなくても、目で見ている景色をそのまま写すことができる優れた機能だ。
しかし、星空の撮影をするならば、「絞り」「シャッタースピード」「ISO感度」の3つの設定を覚えることを勧める。シャッターを切ってみるとわかるが、オートモードで、星空にカメラを向けても、正しい設定を選択することができないのだ。
2.3つの設定を理解して、適正露出を自分でコントロールする
「絞り」とは
明かりを取り入れるための、「穴のようなもの」である。穴を小さくすれば光はあまり入らないし、穴を広げれば光がたくさん入ってくる。絞りは、F値ともいわれる。カメラ内の表示では、「F2.8」などと表示される。数字が小さければ穴は大きく広がり、明かりをより取り込める。
つまり、F5.6よりF2.8の設定の方が、多くの明かりを集めることができる。明るいレンズとは、F値の小さいレンズのことである。
○F値は小さければ小さいほどよいの?
レンズには、それぞれ設定できるF値が決まっている。F値が1.4などと明るいレンズがあるが、一段、二段絞るとよいことがある。理由はサジタルコマフレアを防ぐためである。
※サジタルコマフレアとは、星が鳥の形のよう になってしまう現象である。
「シャッタースピード」とは
シャッターを開けておく時間である。長い時間シャッターを開けておけば、たくさんの明かりが入るし、短い時間ならば少しの明かりが入る。つまり、夜間の撮影では、長い時間あけておく必要がある。
長い時間シャッターを開けておけば、明るいレンズも高感度に強いカメラもいらないのでは?と思う方がいるだろう。確かにシャッターを長く開けておけば、明かりを集めることができるが、日周運動により星は線状に写ってしまう。星を点で写す為には、画角に合わせたシャッタースピードを設定する必要がある。
○画角に合わせたシャッタースピード
下記の計算式で上限露出時間を求めることができる。
500 ÷ レンズの焦点距離(フルサイズ換算)= 上限露出時間(秒)
15mm→33秒
18mm→28秒
20mm→24秒
24mm→20秒
28mm→17秒
見ている方角や位置、写真を引き延ばしたサイズにも関係するため、画角に入る全ての星に適用できるわけでないが目安にして撮影すると便利だ。
「ISO感度」とは
ISO感度は、光を受け取る能力だ。数値が高ければ、弱い光でも強く受け取ることができる。高感度とは、ISO感度が高いことである。暗い場所での撮影で高感度にすれば、シャッタースピードを早くすることができる。よく「高感度に強いカメラ」と聞くと思うが、ISO感度を上げてもノイズが少ない写真が撮れるカメラのことである。
※高ISO感度撮影時に暗部に赤や青、緑のピクセルが見える場合がある。これらを抑制する際、ザラザラ感や粒状感が残る場合がある。これが「輝度ノイズ」と呼ばれている。
優れたカメラでも、感度をあげればノイズが増える。だから、撮影者の気持ちとしては、ISO感度をできるだけ押さえて撮影したいのである。
カメラの仕様によるが、目安は、
ISO感度1000〜3200くらいではないだろうか。
CanonEOS 6dの液晶画面である。左の赤丸からシャッタースピード、青丸の絞り、黄丸のISO感度。
3.まとめ
1.適正露出をコントロールするためには、絞りの数値を小さくして、星の流れないシャッタースピードを選択し、ISO感度を上げて明るさを調整する。
2.ノイズの許容範囲でISO感度を最大にして、 絞りとシャッタースピードを設定するのことも撮影の選択肢の1つであるだろう。
4.作例より
新月の日、標高約2000mからの撮影。光害の少ない空の暗い場所では、このような設定での撮影が必要となる。空が明るくなりすぎず、星の明かりが一番美しく見えるカメラの適正露出を見つける。
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